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REALTOKYOピックアップイベント:映画

種まく旅人 夢のつぎ木

有楽町スバル座 2016年11月5日~終了日未定

「日本の第1次産業を元気に」という趣旨で作る『種まく旅人』シリーズ3作目。今回は桃の名産地の岡山県赤磐市が舞台となる。亡き兄の夢だった”つぎ木栽培”の桃「赤磐の夢」。その品種登録を誓う片岡彩音(高梨臨)は、市役所勤めと桃農家の兼業で孤軍奮闘中。そこに農林水産省官僚の木村治(斎藤工)が調査に訪れ…。佐々部清監督は冒頭の宴会芸シーンなど随所にエンタテインメントの種を播き、本シリーズの花を咲かせる。桃の栽培を通して交流する高梨と斎藤は「普通のひと」を爽やかに好演。農業の現状を捉えつつ、夢に向かい地道にがんばる人々、”普通”の尊さ、人と人との縁の不思議と大切さをしみじみ感じさせてくれる、心安らぐ良作。

By 福嶋真砂代 November 5, 2016

ティファニー ニューヨーク五番街の秘密

YEBISU GARDEN CINEMA 2016年11月5日~終了日未定

マシュー・ミーレー監督(『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』)が撮るNY老舗ドキュメンタリー第2弾。前作撮影中にティファニー広報に声をかけられ、本店奥まで撮影の特別許可も下りて、初の「偉大なる遺産」の映画化に成功した。1937年の創業から今日まで、一族が大切にしてきた伝統と哲学。ティファニーブルーの誕生秘話も興味深い。歴代のデザイナーや現在の初の女性デザインディレクター、フランチェスカ・アムフィテアトロフ、さらに関係者への多角的なインタビュー、そして巧みな構成力によって浮かび上がる「単なる宝飾店」ではない姿。あの有名な映画の撮影秘話も紹介され、ティファニーファンならずとも垂涎の時間に。

By 福嶋真砂代 November 4, 2016

湯を沸かすほどの熱い愛

新宿バルト9 2016年10月29日~終了日未定

中野量太監督のオリジナル脚本による商業映画デビュー作。銭湯を舞台に、家族への中野の思いがぎっしりつまる。夫(オダギリジョー)が出奔して休業状態の「幸の湯」。妻の双葉(宮沢りえ)は突然の余命宣告を受け、3つの使命を自身に誓う。1、家出夫を連れ戻して銭湯を再開。2、娘の独り立ち。3、娘をある人に会わせる。母の決死の計画はうまく運ぶか…。家の太陽のような存在の双葉が倒れてピンチの家族だが、旅人の男(松坂桃李)や夫の連れ子も加わり、家族のカタチが変容していく。日本の新たな”お母ちゃん”となった宮沢に食らいつくような娘役の杉咲花が頼もしい。仰天のラスト、謎めいたタイトルの真意に気づいてさらに仰天!!

By 福嶋真砂代 October 24, 2016

ダゲレオタイプの女

ヒューマントラストシネマ有楽町 2016年10月15日~終了日未定

ただならぬ妖気漂う郊外の古風な屋敷で、世界最古の写真撮影法”ダゲレオタイプ”を再現するステファン(オリヴィエ・グルメ)に撮影助手として雇われたジャン(タハール・ラヒム)。被写体の娘マリー(コンスタンス・ルソー)に長時間露光のために「拘束」を強いる撮影はまさに命がけ。写真のことしか頭にない偏屈な父からの自由を夢見るマリーにジャンは心を寄せるが、やがて奇妙な現象が起こり始め…。古典的な写真の圧倒的な魅力、幽霊たちの優雅な気配、死と生がクロスする幽界をあの手この手で魅せてくれる黒沢清監督作品の醍醐味倍増。マチュー・アマルリックも「ぜひ出たい!」と駆けつけた初フランス撮影にてただならぬ新境地を開いた。

By 福嶋真砂代 October 15, 2016

永い言い訳

TOHOシネマズ 新宿 2016日10月14日~終了日未定

衣笠幸夫(キヌガササチオ)はペンネーム津村啓として売れている作家。ある日、愛人の編集者との不倫中に妻(深津絵里)がバス事故に遭った。幸夫はどうしようもない自意識と体裁のため、自分の感情に向き合えない。そんな折、同じ事故で妻を亡くし素直に悲嘆に暮れる陽一(竹原ピストル)とその子どもらと親交を深め、幸夫にある変化が…。本木雅弘しかいないと熱望した西川美和監督(脚本・原作)は「幸夫」を西川自身に最も近いキャラクターとして描き、子どもを持たずにきたある種の欠落感を見つめる。脇を飾る池松壮亮や黒木華らの繊細な存在感、子役の藤田健心、白鳥玉季の愛くるしさ、揺れ動く幸夫の心を捉える撮影監督山崎裕のカメラが温かい。

By 福嶋真砂代 October 11, 2016

お父さんと伊藤さん

新宿バルト9 2016年10月8日~終了日未定

劇作家、中澤日菜子の小説が原作。書店でアルバイトをする彩(上野樹里)と20歳年上の伊藤さん(リリー・フランキー)が同棲するアパートに、事情があって兄の家から家出してきた彩の父(藤竜也)が転がり込む。デコボコと歳も考え方も違う3人の共同生活が始まるが、果たしてうまくいくのか? 元小学校教師の頑固な父と、謎の経歴の伊藤さんがいつのまにか距離を縮めていく不思議…。表面だけではわからない人の心のヒダを丁寧に掬いとり、時に柔らかく、時に雷鳴を轟かせ、緩急自在のリズムで描くタナダユキ監督の力作。親の老後に自分の将来、大人になると押し寄せる様々な問題の渦中で複雑に揺れる彩を、上野は飄々とユニークに光らせる。

By 福嶋真砂代 October 6, 2016